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建設業の働き方改革とは?

 2019年になって、「働き方改革」という言葉をよく耳にするようになったと思います。

長時間労働による過労死が発生し続けていることが原因で、日本政府は「働き方改革関連法」を施行しました。長時間労働が多い業界として、建設業・運送業・情報通信業などがランキング上位に入ってきています。この記事では長時間労働の多い建設業の働き方改革に関してまとめました。

 

出典:5年後の建設現場はIoTとロボットでこう変わる、戸田建設が技術ビジョン

建設業の実態

本題に入る前に、まずは建設業の実態から説明していきます。

長年建設業で働いてきた方にとっては、「週1休みが普通」「月に100時間を越える残業」はそれほど驚くことではないかもしれません。建設業に勤める私の知人からも「今日も帰れない」「2か月ぶりの休みだ」などと良く聞くことがあります。

様々の調査結果がありますが、残業時間が長い業界ランキングでは基本的に上位に入ってきています。次のグラフは国土交通省が提示している資料です。建設業の労働時間の長さと、休日出勤の多さを表しています。

 

出典;建設業及び建設工事事業者の現状-国土交通省

また、昨年新国立競技場の建設工事に関わっていた23歳の新卒社員が過労自殺するというニュースもありました。この社員が自殺する直前の1か月の残業は212時間だったと言います。

また、下請けの小さな会社だけでなく、超大手のスーパーゼネコンでさえ長時間労働は常態化しています。建設業界で働いていると、周りがそうだからと100時間の以上の残業をしても受け入れてしまう傾向にあります。

なぜ建設業は労働時間が長いのか?

建設業全体の人手不足

 下のグラフは建設業の就業者数を表しています。赤の折れ線がピーク時よりも明らかに減少しているのが分かります。実際に作業を行う職人、職人・お金・品質を管理する現場監督者ともに減少しています。

労働人口の減少の最大の理由は3Kのイメージがついていることにあります。3Kとは、きつい(Kitsui)、きたない(Kitanai)、きけん(Kiken)の頭文字を取っています。このイメージが染みついていることから若年層から支持されず、新しく建設業界に就職する人が少なくなっています。下記のグラフを見ると、40歳以上の在職者が大多数を占めていることが分かります。今後の建設業は、如何に若年層労働者を確保し、増加させるかが課題になります。

出典;建設業及び建設工事事業者の現状-国土交通省

昔と変わらない建設業の文化

 次のグラフから分かるように、建設業の就業者の55歳以上が約3割を占め、29歳以下が1割しかいません。業界全体が超高齢化しているのです。

上司は昔の働き方を部下にも求める傾向にあります。業界の年齢層が高いため、その文化も未だに残っている企業が多いです。私も「昔はもっと働いた」、「今はだいぶ良くなった」と良く言われていました。

この文化・風土では残業することが当たり前になり、誰もが長時間労働をしていまう傾向にあります。

出典;建設業及び建設工事事業者の現状-国土交通省

働き方改革に関して

 2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されました。その1つとして、36協定が一部修正されています。今までの「特別条件付き36協定」では、年6か月まで、残業時間の上限規制を解除することができました。新たな「条件付き36協定」では、上限が100時間までとなりました。つまり、単月でも100時間以上の残業は法律違反となります。上限規制のイメージ図を下記に示します。

出典;厚生労働省 パンフレット「時間外労働の上限規制 分かりやすい」

建設業の働き方改革とは?

 ただし、建設業に関しては、先ほどの改正が5年遅れの2014年4月以降となっています。建設業は長時間労働の傾向が高いことが原因で、ほかの産業と足並みを揃えて時間外労働の上限規制を受けるのには限界がありました。このほかにも週休二日の確保が難しく休日出勤が常態化していること、人手不足によりこれらの問題をすぐに解決できないことが、規制の猶予が適用される背景となっています。猶予が設けられていますが、人手不足と長時間労働の常態化を考えると、課題は山積みです。建設業はそれまでに国レベルで業務改善に取り組み、改善していなければなりません。国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しています。

建設業働き方改革加速化プログラム

 建設業の働き方改革の進行が止まることなく、さらに加速せるためにこのプログラムが策定されました。建設業働き方改革加速化プログラムは3つの取組で構成されています。

①生産性の向上に関する取組
②長時間労働の是正に関する取組
③給与・社会保険に関する取組

①仕事の効率や生産性の向上に関する取組

 建設業では、業務効率改善に、ICTやAI、ロボットを活用しています。例えば、現実の世界ではすでにこんな技術が進んでいます。

・ドローンを使用した3D測量
・タブレット端末を活用した業務効率化
・VRを用いた危険予知訓練

建設現場では、現場監督者の多くがタブレット端末を活用し仕事を行っています。今までは大きな図面を持ち運ぶ必要がありましたが、タブレット端末一つあれば、どこでも図面を見れるようになりました。また、遠方の現場であっても、タブレット端末を用いればテレビ電話で現地の状況を詳細に確認することができ、コスト削減に繋がることもあります。しかし、タブレット端末の普及率は未だに低い状況です。

②週休2日制や適切な工期設定を推進する取組

 建設業では、週休2日取れている人は1割もいません。しかし、2019年になって施主側が土日作業禁止にしている現場もあります。また、建設業の元請であるゼネコンが、隔週で土日休みを徹底していて、徐々に週休2日に目指していく体制は既に見られます。しかし、全ての現場がその体制をとれる訳ではありません。厳しい納期や、着工後の大幅な仕様変更、雨天の影響、などにより、やはり長時間労働を強いられる現場も数多く残っています。

③技能・経緯に合った待遇を可能にする取組

 建設業は、1次請け・2次請け・3次請けと続く多重階層構造になっています。複雑な構造のため、末端の下請け企業の労務単価は非常に低いのが現実です。下請け企業まで、労務単価の改正が行き渡るように取り組んでいます。

建設業の今後

 まだまだ課題が山積みの建設業界ですが、少しずつ変化してきています。5年遅れではありますが、建設業界にも週休2日が常態化する将来がくるのでしょうか?そのためには、長時間労働の改善や賃金改正を行い、労働環境を整える必要があります。その結果、3kのイメージが払拭され、建設業界に就職する若者も増えていく流れが出来るのではないかと思います。むしろ、他の産業が改善され、建設業だけが改善されなければ、人材は奪われ建設業の将来は暗いものとなるでしょう。建設業がなくなることはありえないので、周りが変われば自然と建設業も変わってくるのではないでしょうか。

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