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中小建設業の役割そして課題

平成30年3月末、日本における建設業許可業者数は464,889業者です。これが多いか少ないかの議論は非常に難しいですが、同統計平成12年3月末と比べると136,091業者(▲22.6%)も減っています。これは淘汰されたという表現以外見つからないでしょう。

※国土交通省 土地・建設産業局 建設業課作成資料(建設業許可業者数調査の結果について -建設業許可業者の現況(平成30年3月末現在)-)による。https://www.mlit.go.jp/common/001233709.pdf

そして、中小建設業者が全建設業者の99%を占めます。1%の大手建設業者とで日本の建設業界は構成されています。会社の規模と能力で入札に制限がかかり、業界内での住み分けが行われています。1%の大手建設業者が日本の60%の売り上げを上げています。そしてこの60%の仕事は1%の大手建設業者の監督下のもと99%の中小建設業者が二次下請け、三次下請けを行い仕事を完成させます。

『中小建設業の役割』は大手建設業のためにあるわけではありません。地域経済に貢献できる元気な地場企業でなければなりません。地域の雇用も支えなければなりません。古くから日本の建設業にある因習のために大手建設業者と身分の格差があるような風潮がありますが、決してそんなことはありません。

中小建設業の置かれている状況をよく理解し、中小建設業が今後進むべき道を考えてみたいと思います。

ゼネコンを支える中小建設業

世の中にあるどんな建設工事でもゼネコンだけで出来る工事はありません。各専門業者がいてその数ある専門業者の協力があって初めてひとつの建設工事は形成されます。現在大手ゼネコンや中堅ゼネコンの現場に行っても現場における『直接作業』というものは禁止されています。以前は土工と一緒にコンクリートの打設をしたり、鉄筋屋と一緒に鉄筋を組んだりすることがありました。しかし今では『安全第一』を声高らかに呼びかける世界です。そんな風景は見かけることはなくなりました。中小建設業者は地場のゼネコンでもあります。地域の自治体の発注する工事を請け負いその中ではやはり同じようなピラミッドを作り多くの建設業者を抱えて工事を完成させます。元請業者としてだけで存在する中小建設業者もいますが、大手の下請けをする業者もあれば、時としては大手建設業者とJVとして企業体を組む中小建設業者もいます。自治体は納税者である地域の中小建設業者を育てる義務を持っています。結びつきは大手建設業者より深く強くあったりします。ただの協力業者としてだけではなく、その地域で自治体の仕事を請ける際には大手建設業者の心強いパートナーとなってくれたりもします。協力業者としての中小建設業者、パートナーとしての中小建設業者はゼネコンにとっては不可欠な存在であり、ゼネコンを支える存在です。

日本の建設業界の礎であり、文化・伝統を支える中小建設業

建築で鳶・土工、鉄筋、型枠大工、左官と専業で協力業者が分かれるように土木でも専業の協力業者者がいます。しかし、建築とは少し違いその専業が『シールド屋』、『トンネル屋』であったり『ダム屋』であったりします。工事にかかわる協力業者数が違います。竣工間際の請負額5億円の賃貸マンション現場に入る協力業者の数と100億円のトンネル工事の協力業者の数は一桁違います。数十社と数社ほどの違いになり、建築工事の方が圧倒的に多くの協力業者である中小建設業者の協力を得ます。毎月末の請求の時期に行くと面白いです。各協力業者さんから提出される請求書の数が工事の請負額の多さと正比例しないのです。土木工事におけるそういった専業の中小建設業者が日本のインフラ整備にかかわっているのです。建設業界の礎と言っても間違いないでしょう。そして建築工事においても特殊な能力を持った中小建設業者がいます。地域によっては必ず調査対象とされる埋蔵文化財調査がそれのひとつにあたります。長年の経験を積まなければ出来ないその調査技術で大手ゼネコンの協力業者となることもあれば自治体からの発注も直接請けます。特殊木造建築になる宮大工もそうでしょう。歴史ある宮大工の会社では営業は必要ないそうです。建て替えの時期が来たり、改修の必要な不具合が出た際には寺社仏閣から電話がくるそうで、営業マンは置かずに電話番の女性一人で営業部は任せることが出来ると聞いたことがあります。しかしそんな文化・伝統を支える中小建設業者はほんの一部でしょう。ほとんどの中小建設業者は変わりゆく建設業界のなかで行く先を模索して苦しんでいるに違いありません。

中小建設業の今後の課題

やはり一番は『人の問題』でしょう。社会問題ともあわせて考えねばならず建設業界だけで考えていてもなかなか前に進まないでしょう。人材不足解消にはかなりの時間がかかると思います。しかし、その気になりさえすればかなりいろんなことが出来るものです。

関西の中小建設業者さんです。そこの40代の社長さんはベトナムからの技能実習生を受け入れています。その会社は埋蔵文化財調査の専門業者です。ベトナムからの技能実習生はみなまじめだと言います。そして勤勉だとも言います。そして今、彼らがベトナムに帰ってから自国の文化財調査が出来るように育てているのです。歴史あるベトナムで育った実習生たちはその意義をよく理解して毎日まじめに働いてくれるそうです。この40代の社長さんはいずれ先細り無くなってしまう埋蔵文化財発掘調査での仕事の活路をベトナムに向けています。そのための人材育成に現在励んでいるところです。

海外からの技能実習生をただ使うだけではなく将来の商売の卵と見立て、人間関係を作りながら育てていく。こんな考えの海外からの労働者の受け入れもあってもいいのではないでしょうか。

もう一つは、これも関西の中小建設業者さんですが、こちらは高齢者介護事業に乗り出して成功しています。異業種参入ということで高齢者介護事業に手を出して失敗をしたという話を以前いくつか聞きました。こちらはサービス付き高齢者向け住宅からスタートして、小規模多機能ホーム、デイサービスへと展開、そして再びサービス付き高齢者向け住宅と次々と事業展開を進めています。所有用地の利用のほかは自社建設会社の人材の流用はしていません。福祉のプロを雇い入れて運営させています。その社長の言葉で重く感じたのは「毎月心配なく介護保険料が口座に入ってくる。」という事でした。経営を本当に理解して会社の代表を務めているだけのことがあると思いました。経営に通じた人は何をやっても成功するのでしょう。介護報酬の見直しで以前より経営は厳しくないとも言っていました。まだまだ足りない施設です。地域に良い評判があがれば商売は順調に進むようです。薄利多売ではないですが複数の事業所運営に秘訣はあるようです。本業の建設会社の評判も上がり、やはり優秀な社長さんです。

この社長はお金に細かく非常に厳しい人です。建設業界、特に中小建設業者にありがちなドンブリ勘定が出来ない方です。シビアな実行予算を組むことのできる人です。この『ドンブリ勘定からの脱却、実行予算作り』ということも中小建設業者に必須だと思います。まずは身を守り戦いに挑まなければなりません。

先を読み、手を打たねばならぬと冒頭にあげた中小建設業46万社の社長さんのほとんどが考えているのではないでしょうか。海外からの労働者の問題やITの導入はなるようになっていくことで単独で考えてもまだ意味はないと思います。まずは身の周りを固めることです。会社のお金の動きにはシビアになり、実行予算を用い会社の先を読む力を養うことでしょう。

そして迫りくる超高齢化時代に備えて若年入植者確保のために手を打つべきです。そのためには地元での会社の評判だと思います。そのための方法は自社と地域にあったやり方を考えるしかありません。

なんといっても良い会社として存続をさせるには良い人材を集めることです。素材さえよければ、上手に育てれば優秀な人材になってくれます。頭の痛いことばかりの中小建設業の経営者のみなさんには地域で建設業の魅力を若者に説いていただくことが最重要な喫緊の課題だと思います。

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